与える人

先日、大好きな叔父が旅立ちました。


一番古い記憶は、叔父と二人で留守番していた雨の日、雷が鳴って

「ひろみ、ご覧、あれが花火だよ。」

と雷のことを花火と教えてもらったこと。

素直に信じていたので、雷を怖がらない私を、母は不思議に思っていたそうです。


いつも冗談なんだかホントなんだかわからないこと言っては、周りを笑わせていた叔父。

私が車の免許をとった時は

「いいか、福岡では、青は進め、黄色は気をつけて進め、赤はもっと気をつけて進め、だぞ。」

と言い、おいおいと思ったものでした。

妹が免許取ったときも同じことを言っていました。

その数年後、妹が社用車で黄色で止まったら、後続車にぶつけられました。

相手が言うには「(妹が)行くと思ったから。」

本当に黄色で行く人種がいたわけです。

今思えば、そうやって運転しなさい、というわけではなく、そういう車が福岡はいるから気をつけろ、という叔父なりのアドバイスだったのでしょう。


よく家族で旅行に行ったり、カラオケに行ったり。

「さそり座の女」と「愛と死をみつめて」は、叔父が歌っていたのを覚えていたので、元歌をテレビで見た時に「これなんだ!」と驚いたものでした。(上手だったのです)


昭和の男には珍しいイクメンで、2人の子どもの保育園の送迎をしていました。

あの時代にフルタイムで働きキャリアを積む妻を支え、自分の仕事もしっかりして後輩を育てていた叔父。

自分が親になったからこそ、その凄さに気づきます。

その原動力は、何より叔母への愛だったのでしょう。

「そげなすごかことしとらん。」

と言ったあと、冗談を言って照れを隠すのだろうなぁ。

 

インスタントラーメンの美味しい作り方、

明太イワシのおいしさ

博多名物「びっくり亭」

美味しい焼肉屋さん

高級品だけでなくB級グルメや家庭の味まで

「美味しいものは美味しい」

を教えてくれたのは、叔父だったと思います。

それは、今、食で活動する私の根っこでもあります。

 

叔父は卵焼きが作るのが上手で、その味は超えられないと思います。

もう一度食べたかったな、おじさんの卵焼き。

これは私が今年の大寒に作った卵焼き。

雪が好きだった叔父。

雪が降ると、幼かった私と妹を連れて山に行き、雪だるまの作り方を教えてくれました。

そんな叔父の葬儀は、雪の予報の日。

雪が好きだからって、自分が旅立つ日を雪にしなくても。


沢山の笑顔と、私の基本の考え方。皆叔父が与えてくれたもの。叔父は与える人でした。

 

車が好きな叔父は、救急車や検診車を作る仕事をしていました。

その仕事ぶりを、本当に嬉しそうに語る叔母の優しい目は、叔父が存命のときも、葬儀のときも変わらず、叔父のことを心から尊敬していることがわかります。

職人気質で面倒見が良かった叔父は、在職中も退職後も、色んな人が叔父を慕って家に訪れていました。

叔父は職場でも与える人だったのでしょう。

通夜は深夜まで会社の人が訪れていました。

  

コロナ禍もあって、主人と次女は葬儀の前に、私と長女は葬儀に参列して、叔父とのお別れをしました。

次女が、

「じいじ(私の父)とおじさん(叔父)が外でタバコを吸う時に、そこに行くのが好きだった。タバコ吸いようっちゃけん来るなぁ、と言いながらも、面白い話をしてくれたから、大好きだった。」

と、私が知らない叔父と次女の思い出を話してくれました。

主人は、車で通勤する時、叔父に会うことが度々あり

「上手に並走したら、窓から1万円を投げてあげる。」

と叔父が主人に笑いながら言ってました。主人の並走が下手だったのか、叶うことはありませんでした。

 

葬儀の時、お経を聞きながら

「浄土真宗は”南無阿弥陀仏”と唱えると、生前どんな悪いことをした人も極楽浄土に行ける」ということを和尚様がある法事の法話で話されていた時、叔父がニヤッと笑って

「いいことをしても悪いことをしても極楽に行けるんだったら、悪いことした方がいいやないか。」

と私に和尚様に聞こえないようにつぶいやいたのを思い出しました。

叔父さん、ただひたすら周りを笑顔にして、悪いことせんまま、極楽にいこうとしてるやん。

泣いていいのか笑っていいのか、最後までこんなイタズラを仕込んで、まったくもう。


葬儀の最後、棺の蓋をしめる前に花で叔父を包む時、沢山あった花の中から、長女があえてカスミソウを選んで持っていきました。

「なんでカスミソウなん?」

「カスミソウの花言葉は”感謝”だから。」

あまり多くを語らない長女らしい、叔父への最後のあいさつでした。

 

みんなに楽しい思い出を与えて逝った叔父。

叔父は法事で親戚が集まり、互いに話すことで、また皆に思い出を与えてくれるのでしょう。

旅立ってもなお、与える人なのが、叔父らしい。

 

葬儀までの一連の事が終わって、一息ついたら、我が家の車の納車でした。

車の登録日は、叔父の命日でした。

車が好きだった叔父に見せたかったなぁ。間に合わなかったなぁ。

登録日が命日とか、粋なことしてくれた叔父には悪いけど、ちゃんと黄色で止まるけんね。

後ろからぶつかられないように、見守ってください。

あまぐりキッチン

Food Social Educator  「食で子ども・若者と社会をつなぐ」 美味しいとHappyはシェアしよう! 美味しいの世界は、深く広く、楽しい 知って食べることで、味も、日常も、世界も変わる その一口から見える世界を、未来を翔けるみんなに