雑煮の結婚
クリスマスもまだ来ていませんが、我が家のお雑煮の話。
我が家のお雑煮は、わたしの父の実家のお雑煮がベース。
出汁は地鶏、だけ。
味付けは、お醤油と酒、だけ。
具はかまぼことだしを取った地鶏、だけ。
ちょっとあしらいに、昆布とスルメ。
という超シンプル雑煮です。
しかしそれぞれに意味があって、雑煮の支度をする祖母の横で、ずっと聞いていました。
地鶏は親鳥。地鶏は水から煮る。
グラグラ沸騰すると出汁が濁るので、グラグラしない程度の火にする。
お醤油と酒は、沸騰してから。アルコールを飛ばして、お醤油は醤油臭くない程度で香りが逃げない程度。
餅は丸餅。必ず2つ。2つも食べられない小さな子でも、もっと餅が食べたい餅好きな人も、必ず2つ。幸せが重なるように。お出しの中で温めます。これまたグラグラさせると餅が溶けるので、餅が揺れない程度の火加減で、そっと温めます。
かまぼこは、3切れはだめ。みきれ→身切れ→身を切るを連想させるから。
スルメは「もうするめぇ」昆布は「よろ昆布」とつぶやきながら、椀にあしらっていました。
島にある私の父の実家。
普段は美味しい魚を食べているので、地鶏はごちそうだったのでしょう。
その地鶏で年始から最高のおもてなしをしたのが、この雑煮だったのでは、と推察します。
身を切るというのをとても嫌がったのが、幼心でも不思議でした。もともと庄屋の流れをくむ家だと聞いていたので、農家なのになぁ、と。後に伯父が家を整理した時、鎧兜が出てきたと聞き、もしかしたら農家よりの武士だったのでは?と思うと、身を切るというのを極端に嫌がってたのも頷けました。
祖母の横で雑煮やしめ縄やお盆の料理とか、色々習うのが好きでしたが、中学生になるとなかなか盆正月に祖母の家にいけなくなり、ちゃんと祖母の味です、と言えるのはこの雑煮ぐらい。
主人はこの雑煮を気に入って、我が家の雑煮はこの出汁で、と言ってくれたので、この雑煮になりました。
嫁ぎ先のお雑煮もこれまたシンプルで美味しい。
あごだしのお澄ましに、別に茹でたお餅、かまぼこ、かつお菜、梅人参。
料亭のようで、年始から背筋が伸びる仕立てです。
最後食べ終わったときに、餅の下からかつお菜が出てきて、なんて素晴らしいんだろうと思いました。
餅が椀にくっつかないようにする心配り。
この心は娘たちにも繋ぎたい、と思ったので
私の実家のお雑煮に入らないかつお菜を入れることになりました。
かつお菜は、博多のお正月に欠かせないお野菜。
こんなに霜に当たっても強く育ち、野菜が不足する冬場の貴重なビタミン源だったんだろうな、と思います。
私の父の実家は博多ではなく、かつお菜と縁がなかったので、結婚して「かつお菜って美味しいんだ」と知りました。
そして出来上がったのが今のお雑煮のスタイル。
私の祖母のお雑煮にかつお菜入り。
お餅の下にはかつお菜の茎の部分のそぎ切りを敷いて
私の実家のお雑煮と、夫の実家のお雑煮が結婚したみたいです。
家の伝統、というものもあるのでしょうけれど、
ルーツの違う2人が出会って、お互いの雑煮の好きなところを組み合わせて、雑煮も変化していく。
そうやって受け継がれていくお雑煮もいいな、と。
きっと祖母も「よかよか、上手にできとる」と言ってくれる気がします。
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