すべての野菜は尊い

野菜ソムリエの大先輩、なかしまゆみさんから、宮崎の伝統野菜「佐土原ナス」を頂きました。

 

茄子紺とは違う、ラベンダーのような淡い紫と長くても丸みを帯びた優しいルックス。

皮は柔らかくて傷がつきやすそうなので、遠距離輸送には向かない野菜だな、だから宮崎から出てこない野菜なのね、というのが見た目の印象です。

 

まずは生で口に入れると、ふわふわとして柔らかい。

香りもりんごのようでアクがない。

これは生食できる、というのが一口頂いた印象です。

まるで現代人の口に合うかのように品種改良されたみたいですが、伝統野菜なんですね。


ただこのふわふわした食感は、薄切りにしてサラダやカルパッチョ風はむいてないなぁ。

でも生で食べたい。

このふわふわを活かすには、大きく切って、歯で噛むということが必須だな。

ということで

拍子木に切って、しそを巻き、しゃぶしゃぶした豚肉を巻いてみました。

焼いた肉も考えたのですが、佐土原ナスの優しい香りが肉の香ばしい香りに隠れてしまうので、あえて茹でたものを巻きました。


タレはポン酢やニラ醤油も美味しいのですが

オリーブオイルに塩、レモン汁をギュッとかけたものもおすすめです。


1本の佐土原ナスでたくさんできるので、味変?で

焼いてみるのもアリです。

お肉には火が通っているので、さっと焼くぐらいでOK。

火を通すことで佐土原ナスがとろけるように柔らかくなって、印象がまるで変わります。

1回で2度美味しい。

生もよし、焼いてもよし、佐土原ナスの実力素晴らしいです。

同じ宮崎の「都農ワイン」のシャルドネでいただきたかったなぁ〜。


こんな地域に根づいた野菜に出会うと、旅をしたくなります。

この野菜が育つために必要な、土地、空気、光、風を感じに行きたくなるのです。

きっかけは送られてきたものでも、それが旅する理由になり、地域を知るきっかけとなり、ひいては関係人口に繋がったら、と妄想が止まりません。 


佐土原ナスのように、野菜には、伝統野菜、在来種、地方品種と言われる野菜があります。

有名なのは、賀茂なすや、加賀太胡瓜、福岡はかつお菜、熊本には水前寺菜とか、各地方に根付いた野菜たちがいます。

まるで日本古来の野菜のように言われていますが、そうではなく

外国からやってきた野菜が、日本各地に伝播し、その地域に適応していき、定着したものです。

ちなみに、日本古来から自生した野菜は
ミツバ、ワサビ、ウド、ミョウガ、セリ、ジュンサイ、フキ、オカヒジキ、ジネンジョ、などなどで、
今家庭の冷蔵庫に常備されているものの殆どは、もともと「外来種」なのです。

外来種を先人たちが、その土地の気候風土や文化に合わせて、品種改良したり選抜したものがいわゆる「在来種」、できた時代に戻ればその時代の新品種とも言えますね。


戦後の食糧難で、たくさんの野菜を作り、全国に届けることが必要になりました。
そこで、収量が多い、大きさが揃って運びやすい、栄養価が高い、という現在多く見かける品種たちが市場を席巻しました。それがどれだけ日本の食糧難を救い、高度成長を支えたことでしょうか。

在来種たちはどうなったかと言いますと、作る人が減ってなくなった品種もありますが、地域独特の個性を活かし、地域おこしの一つとして、道の駅や直売所を彩る野菜たちになってます。

 

在来種がいいとか、新品種が悪いとか、固定種がいいとかf1種が悪いとか、野菜の品種一つ一つのあげ足を取って、良い悪いという記事を見かけますが、野菜の善悪を人間が決めるなんて、それこそ愚の骨頂だと思います。

野菜たちは、種がまかれた場所で懸命に生き、実を結ぶ。
その姿に純粋に敬意を表し、育ててくれた農家、運んでくれた多くの方々に感謝して命をいただく。
それだけでいいのです。

今回の佐土原ナスの食べ方も、伝統野菜だからということにとらわれず、佐土原ナスと向き合って、その特徴をどう活かすか、それだけを考えて作りました。
私が出来る、野菜への最大の敬意です。


人間たちが後付したストーリーを知ってるか知らないかでマウント合戦をしているのを、在来種も新品種も、野菜たちはきっと失笑しながら、今日も日を浴びてすくすくと育っていることでしょう。


すべての命はどれも素晴らしく尊いのです。

あまぐりキッチン

Food Social Educator  「食で子ども・若者と社会をつなぐ」 美味しいとHappyはシェアしよう! 美味しいの世界は、深く広く、楽しい 知って食べることで、味も、日常も、世界も変わる その一口から見える世界を、未来を翔けるみんなに